消費税引き上げとその影響について
2019年10月より消費税率が10%に引き上げられます。
税務上ポイントになるのは軽減税率と経過措置ですが、軽減税率についてはテレビ等でしょっちゅう特集されていますし、食品と新聞は軽減税率が適用されるとか、フードコートで食べると消費税10%だけとテイクアウトすると消費税8%になる、なんてことはご存知の方も多いのではないでしょうか。
経過措置については、平成31年3月31日までに請負契約において、成果物の譲渡が10月1日以降であっても改正前の税率が適用される、というようなもので、これも実務担当者は知っておかなければならない事ですが、多くの人はあまり関係ないでしょう。
それよりも。
普段税金のことをそんなに意識していなくても、大きく影響が出るなと思っている点が2点あります。
マイホームの購入に伴う消費税
住宅を購入する場合、土地には消費税がかかりませんが建物部分には消費税が課税されます。(中古住宅を課税事業者ではない個人から購入する場合等は除きます)
もともと金額の大きい不動産ですから、例えば4000万円の2%違っただけで簡単に80万円の差がつきます。このほかに仲介手数料等の付帯経費も多くの部分で影響を受けます。
この点、平成31年度の税制改正では、平成31年10月1日から平成32年12月31日までに購入した住宅のうち、消費税が10%の部分が含まれる場合、住宅ローン控除が3年間延長されるという措置が講ぜられました。
しかし、この措置は、単純に3年間延長されるのではなく、
「期末の借入残高の1%(従来の控除額)」と「住宅の取得に係る消費税引上げ部分の1/3*」のいずれか少ないほうです。
1/3の3年なので引上げ部分を控除しますと読めなくもないのですが、いずれか少ないほうとされているもう片方は、住宅ローン11年目~13年目の期末残高の1%ですから、相当額を返済した後の額になるので、必ずしも引上げ部分が控除されるわけではありません。しかも、全部帰ってくるとしても10年以上先です。
*[住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等]*2%/3という記載ですが要は税抜価格の2%、すなわち引上げ部分です。
特に、土地部分よりも建物部分の比重が大きいマンションの購入を検討されているのであれば、急いだほうがよいかもしれません。もちろん、駆け込み需要による価格高騰や、焦りを見せれば足元を見られる可能性もあるので、慎重を期すべきですが、判断材料のひとつにすべきでしょう。
インボイス制度の導入と小規模事業主への影響
この制度が開始されるのは平成35年10月からです。今までは、仮に請求書に消費税が明記されていなくても、支払側においてその取引内容に応じて消費税を計算して仕入税額控除を行うことができました。しかしながら、インボイス制度が導入された後は、「適格請求書」がなければ仕入税額控除ができません。この「適格請求書」は税務署に事前登録した適格請求書発行事業者しか発行できません。
これがどういうことかというと、今まで免税事業者であったフリーランス、個人事業主、小規模法人は消費税を売上に乗せる事ができなくなります。課税事業者になればできますが、当然消費税を納付しなければなりません。
平成35年は消費税が当然10%になっているわけですから、いきなり売上が実質的に単純計算で10%減ることになります。今までがある意味で不当に益税を享受していたといえばそれまでですが、もらう側も払う側もそれを織り込み済みで価格決定をしている側面があるのは否めません。
しかしながら、その影響は相当に大きいものですから、該当する個人事業主、小規模法人はもちろん、そういった取引先が多数ある法人も価格交渉の準備を始めておいたほうがよいでしょう。いざ始まってから値上げ交渉、或いはその値上げを抑える準備を始めても材料がありませんから。
もっとも、騒がれ始めてから開始が延長されたり経過措置が入ったりするのかもしれませんが…